7.17.2011

夢トラWS2 象は鼻が長いー演技の文法「流れ」



「象は鼻が長い」

何の変哲もない日本語の一文ですが、実はこの文は言語学や国語学ではとても有名な一文です。

学問的な細かい話はどうでもいいのですが、この文の主語ってどれだか分かりますか?
主語の定義なんかも問題になってくるとは思いますが答えは一般的には「鼻(が)」が主語だということになっています。

じゃあ「象(は)」の部分はなんなんだ、という話にもなりそうですがこれは国語学では「主題」という用語を使い主語とは違うものとして扱います。

それぞれ、主題「象(は)」がその文が何の話題を扱っているかを示し、主語「鼻(が)」が話の具体的な対象を示します。


図を見てもらうと分かりやすいと思いますが、主題が前提となる文脈を示し、主語が話の要点である述部の具体的な主体を表します。


乱暴な話、最初の文が
「長い」だけでは何がなんだか分からないのは当然として
「鼻が長い」でも「象は長い」だけでも、何の話をしてるのかよく分かりません。

しっかりと前提となる情報をひとつずつ提示するからこそ、伝えたいことが伝わる。
当たり前のことではありますが、案外ないがしろにされていることも多いと思います。

ことジャグリングルーティンに関しては、お客さんの理解を無視した自己中な流れがなんと多いこと。

今回は、楽しく会話を楽しむのと同じように、ちゃんと伝えたいことを伝えるための大前提となる

演技の文法

の一番の基礎についての内容をお話しします。


わたしは日本語構文における「主題」「主語」の概念は、演技における技の「カテゴリー」と「具体的技」と似た関係にあると考えています。
カテゴリーは前回のWS記事で紹介したもののことですね。

日本語で「主題」を示してから具体的な「主語」「述語(この要素はあえて例えるなら技の発展とも言えると思います)」に入るように

オーソドックスなルーティンでは次の流れがどんなカテゴリーの技で構成されているかをしっかりと提示した上で具体的な様々な技を見せていくと効果的です。

ではこの「カテゴリを提示する」というのは具体的にはどういう行為なのでしょうか。
方法は多々ありますが、この最も大切なのは

「お客さんがその後の技を見る上で参照できる基準を示す」

という点でしょう。
特別な意図を求めないのならばまずは

「お客さんがそのカテゴリーの基本技だと認識して欲しい技をそのカテゴリーの最初の技に選ぶ」

ことが効果的です。

当然ですがその際は技術習得のための基本技ではなく、見栄えとしての基本となっている技を選ぶように注意してください。

基本技に向いているのは何か、という質問は難しいところでもあります。
ただし、提示したいカテゴリーによって有効なものは変わるとはいえ、基本的なルーティンでは

・ゆっくりな動きの技 

・連続技よりもより単発 技

・より自然な体勢で出来る技

・複雑でない、極力1つの要素しか持っていない技

・一回の所要時間が短い技

などが有効な場合が多いと思います。

さらに、場合によっては所謂「技」である必要すらない場合もあります。
高いトスを多用する小構成の前にお客さんの意識を植えに向ける動作をする、特殊な道具の使い方をするときは技を行う直前の形で一度道具を静止させる、など次に行う技の変化に気づくための前提情報の提示さえ出来るのなら、実質的にはメソッドはなんでもいいです。


最後に繰り返しますが、提示したいカテゴリーによって有効な情報提示は変わります。
実際のルーティンを作る際にはご自分の意図した流れには何が有効かをしっかり考えてみてください。

同じテーマ(カテゴリー)でまとめた小構成の一番最初にこうして基準となる情報を置いてあげることで、お客さんがさらなる発展技を見たとき変化に気づきやすくなります。
ルーティン作りを何から始めたらいいか分からない、という場合はまずはこんな感じで小構成からつくりはじめてみてください。
きっといい一歩が踏み出せると思います。

7.15.2011

夢トラWS1 座布団は椅子なのかーお客さんにやさしいジャグリング

「何やってるかよく分かんなかったけどすごかったよ」

ジャグリングをやっていない人とジャグリングの演技を見に行くと、時たまこんな感想をくれることがあります。
意識してみると思いの外いろんな人がこんな感想を持ってるようで、ジャグリングの演技に付随する「分かりにくさ」というものが気になってきます。

「何をやっているのか分からない」という評価そのものは、それだけではネガティブな評価ではもちろんありません。
しかしよく耳にするこの感想は、よくよく聞いてみるとどうも


「ジャグリングをやっているあなたは楽しめるかもしれないけれど、わたしはちょっと見れば満足。だってずっと同じことやってるだけでしょ?」


そんなニュアンスを含んでいるようでした。
もちろんその時に観たジャグラーが、ずっと同じ技を5分間続けていたなんて訳はありません。
高い技術力と多彩なバリエーションを織りまぜた様々な技を披露していたのにも関わらず、上記のような感想が出てしまっていたのです。

しかし数学をやっていない人がいろいろな数式を見たときに、単なる文字の羅列で全部一緒に見えてしまうのと同じように


ジャグリングをやっていない人は単なる技の羅列では全部同じに見えてしまうんです


いくらルーティンに入れる技数が多くても、それを同じ技だと見られてしまえば元も子もありません。
圧倒的に見栄えの違う高難度の技をいくらでも持っている上級者ならまだなんとかなるかもしれませんが、技数の少ない初中級者にこれはまさに死活問題です。

そんな問題になんとか立ち向かってもらおう。それがこのWS「座布団は椅子なのか」のメインテーマです。

前置き長いでしょう。知ってます。そういう子なんです。
でも、一番大事なのはメソッドそのものよりそのメソッドが必要な理由だと思っています。
WSの内容を超えて、自分なりの方法を模索しようとしたとき一番大事なのはメソッドではなく乗り越えるべき問題ですし、そもそも体験してもらうことに主眼に置いたWSの説明をだらだら続けるよりは、その背景の説明に時間を咲いたほうが実際に試してみると気に有効だとも思います。



さて、さらなる前置きが始まってしまう前に本題に入っていきましょう。

タイトルにある「座布団は椅子なのか」の一文。
どう思われますか? 座布団は椅子でしょうか?

「椅子だ」と即答出来る人から「椅子じゃない」と即答できる人、悩む人、この文そのものに文句を言い出す人、いろいろいると思います。

でも

座布団、PC、リクライニングチェア、トースター、パイプ椅子、ベンチ、冷蔵庫、電子レンジ

こんな単語群の中から

「座布団をなんかのカテゴリーに入れて」

と言われたら、多くの人が座布団を椅子と同じ物としてカテゴライズすると思います。


しかし

座布団、クッション、テーブル、テーブルクロス、棚、椅子、絨毯

こんな単語群だったらどうでしょう。
前のものより分けづらい単語群ですが、座布団を椅子と同じカテゴリーに入れるひとはぐっと減るのではないかと想います。

このように、何かについて理解、整理しようとするとき他のものとの性質を比較して評価を下す行為は我々の日常にありふれています。

端的に言い換えると


人はものごとをカテゴリー分けして理解する


と言うことが出来るでしょう。

この特性をジャグリングにも適応してみよう、そんな試みです。


夢トランクのWSでは、初中級者のジャグリングの演技において主眼は道具や技である、という前提のもと主に「道具の使い方」という側面でカテゴリー分けを行っていきました。

「自分の使うジャグリング道具の使い方で異なったカテゴリーを考える」という題を与え、実際に参加者に道具の使い方を考えてもらいます。

さて、このワークをするときに、是非気をつけていただきたいことの一つに

「技術習得を目的としたカテゴリー分けは一旦忘れる」

というところがあります。


ボールでいうなら例えば「ミルズメス系」「シャワー系」、デビルスティックで言うなら「ソー系」や「アイドリング系」など教本に書いてあるカテゴリー分けは技術習得を目的とした場合は有効ですが、お客さんからどう見える化を基準にした分け方ではありません。

デビルスティックのソー系の技を例にあげると、縦向きのソート横向きのソーではお客さんにとって印象は違うでしょうし、横向きのソートプロペラはおそらくほぼ同じことをしてるように見えるはずです。
今回の目標は「よく分からない」ジャグリングからの脱却であるということを意識して、ひとつひとつの技道具の使い方が何をしているように見えるのか注意してカテゴリーについて考えてみましょう。

もちろん道具によって出てくるカテゴリーは違いますし、同じ道具でも持ってる発展技の種類やその人の完成で様々なカテゴリーが考えられます。
柔軟な発想を心がけ、同じ技で別のカテゴリーを考えてみたり、普段の練習でもカテゴリーを意識して技に取り組む時間などを設けると効果的でしょうね。


ルーティンを実際に作る際にはこうして分けられたカテゴリーを利用して、同じカテゴリーの技はひとつの小構成にまとめるように気をつけてみます。
そうすることで、見ているお客さんが「今は何々をしているパート」と理解しやすくなります。
お客さんにこの理解があれば、その枠の中で様々な発展を見せたときにそのカテゴリーをヒントに変化に気づきやすくなります。
例えば演技中唐突にビハインドザバックを単発でやっただけでは見逃されることもあります。
でも事前に簡単なボディスローをいくつかやったあとならば「あちこち身体を通す技をやっているんだ」お客さんのボディスローへのセンサーは高まってますから技や変化に気付いてもらいやすくなります。
もちろんこういったお客さんが期待する「予定調和」を裏切るのもまたテクニックのひとつですが、それはまた後の話。


まずはしっかりとお客さんに分かりやすい演技を作るべく、技のカテゴリー分けから初めてみましょう。

夢トラのやり方 はじめに

夢トラでは年一回の定例公演を行っていましたが、非常に若いサークルな上に技術的に熱心なメンバーもほとんどいませんでした。

その環境で舞台公演を行うということが非常にハードルの高いことであることは想像に難くありません。


それでもなんとか2008年から2010年の三年間はぱわぁの指揮のもと、そして今年2011年はついにぱわぁの手を離れ後輩たちの手のみで、舞台公演を行うことが出来ました。

まだまだ発展途上なサークルでレベル、内容など批判が多いことも存じていますが、それでもなんとか形にすることを続けることが出来たという事実は代えがたい夢トランクの財産だと思っています。


自分なりに振り返り、これまでの舞台公演を可能にした理由として最も大きいものは「ルーティン作成ワークショップ(WS)」の存在だと思っています。

技数も少ない、演技など一度もしたことがないような初心者が演技をする上で非常に重要になる「構成」の知識。

それを夢トランクでは早い時期にある程度簡略化し整理したWSという形でメンバーに提供したことにより、暗中模索のようなルーティンづくりの作業の助けとなったのだと考えています。


このカテゴリー内の記事では、そんな夢トランクのWSの内容を簡単にではありますが紹介します。


言うまでもありませんが、これはルーティンづくりのある一つの方法に過ぎません。

また、技数の少ない初心者がいかに演技を成り立たせるかという側面に基づいたWSですので内容は非常に基礎的かつ限定的になっています。

それを理解した上で読み進めていただければと思います。


参考に、このWSで扱う知識にほぼ忠実な形で演技を作った演技の動画を紹介します。

技術レベルは低いにも関わらず非常に高い評価を頂いている作品です。


Wunderkammer - C!RCA

今モントリオールはMontreal Complement Cirqueというサーカスフェスティバルをやってるのですが、そこでの目玉ショーの一つであるWunderkammerというショーを見に行ってきました。

オーストラリアの割と有名なカンパニーC!RCAによる公演。

メイキングと演出の人の話


出演者は7人、演出はきっちりつけてあって所謂ストーリーはなし。
複数人が出てる時間はかなり長くてハンドトゥハンドの技術をつなぎや全体演出の要にしてる。その上で要所要所はソロやデュオの演目で締める。

身体性からのアプローチでどこまできれいな絵を描けるか、というのに挑戦しつつ演目はきっちりこなす感じ。

基本的にすごく幻想的でシリアスな雰囲気なんだけども、ひたすら脱衣するので笑いはよく起こる。

美しい→脱ぐ→美しい→脱ぐ→脱ぐ→脱ぐ

って感じ。オーストラリア人はなんであんなに脱ぐのが好きなんですか?(偏見)
でも鍛え上げた身体での脱衣はやっぱり美しいです。

小道具の使い方の発想や演目の特性の理解のレベルが高くて、アクロバットがほとんどという演目自体のバリエーションの少なさに対して観た充実感は相当高い。

よいショーでした。



新設

記録用。想定読者は1年後の自分。
どうなるかね。