シルクエロワーズによるiD東京公演、あまりに素晴らしい出来に二回見に行ってしまいました。
参考にしたいこと、忘れたくないことが溢れていたので備忘録。
ネタバレの塊です。
こんなの
【全体】
「HIP HOP CIRCUS」と称する通り、ヒップホップカルチャーをイメージさせる舞台、衣装、演出で、主にストリートダンスを共通言語に構成を組み立てていた。
出演者は15人で、内4名はサーカスアクターでなくダンサー。4名ともブレイクダンスは出来て、ブレイクメインなのが2人と、ロッカーとヒップホッパー。ヒップホッパーだけ女。舞台セットは若干抽象性が高い、なんとなく街の建物が連なったような印象を与える巨大な装置にプロジェクションマッピングで様々なものを投影して舞台を彩っていた。
演目中に後ろで他メンバーが踊ってたり、それにメイン演者が混ざったり、オムニバスっぽい構成は大切にしつつも非常にシームレスな舞台空間を演出していた。ダンサーと数名を除き二演目以上こなすメンバーが多く、出演者数を客が顔を覚えられる人数に抑えつつ二時間がっつり見応えのあるショーになっていた。
演出手法としては全体的に異なるものの共通点を見つけていくのが非常に上手い。具体的なものは各演目の感想で。
【ハンドトゥハンド】
開演し明転すると、ダウンタウンの雑踏のようなシーン。服装は無機質で、でも動きは個性的な、そんな雑踏。
ふとした瞬間全体がスローになり、その中普通の速度で歩いてきてすれ違う男女。声をかける男と、突っぱねる女。そんな中から生まれるコミュニケーションをハンドトゥハンドで表現。片方が相手に触れたり、相手を動かそうとすると、もう片方はそれを避けたり、従ったり、反発したり。そんな触れ合いから発生する力が色々な関係性を連想させて情緒にあふれる。演目始まりかけのタイミングで一旦雑踏の中でただすれ違った瞬間の絵をもう一度見せてから、改めて演目を始めたことで二人の肉体的な関わりがあくまで精神世界のものであることを強調する。
女性が今時のフライヤーには珍しく割とパワフルな体格で、男性との体格の差をあまり感じないせいか一般的な技でも非常に見応えがあった。力押しの静止系の技は少なく技術面では手の上で行う倒立がほぼ全て。女性が足にしがみついて男が歩くと女性が必然的に転がる動き、男の掌を順に踏みつつ歩いてくムーブは覚えておきたい。表現として印象的なだったのは対角を向いて静止してから二人同じタイミングで振り向くとことか。素敵。
ところでベースの片手にフライヤーが両手で掴まり倒立する技は難易度の割に非常に見栄えが悪いんじゃ、と。トリ技にはきついんじゃ。
【チャイニーズポール】
ハンドトゥハンドの終わりと共に、女性の仲間と思われる面々が現れ二人の間に入る。そうすると男の仲間も現れ、対立の様相。舞台背景も相まりウエストサイドストーリーを思わせる。両グループのリーダー格がそびえ立つポールの周りで合間見える。
周りにかなりの人数がいて色々踊ってる中、メインのポールアクターとブレイクダンサー1~2名が競い合うように技を出し合う。主にポールの技の性質から指向性や緩急をデフォルメして後ろの振りやブレイクダンサーの技とつなげていく。技と技の合間、ポールから降りた時などダンサーに混じってユニゾンを踊ったり、ユニゾンを踊るダンサー達の間を駆け抜けたりと単なる技の出し合いにとどまらない舞台の使い方が演目のテンポを非常によくコントロールして、舞台全体のみならず客席まで含めた空気を作っていた。一見関係のないダンスを挟んだりすることでマイナスの要素が出たりしてもおかしくないもんだと思うんだけど、何よりポールの兄ちゃんのポーズ時、技前、技後などの呼吸というか緩急の付け方が上手くて、そういった足されている要素が非常にいい感じに効いていた。
【移動芸術】
ポールが終わると少し緊張感がほぐらるテンポのいい曲が流れる。それに合わせ最初はダンサー数人でパルクールの各種技法をヒップホップ風にアレンジした踊りを始める。そこにインラインスケートや自転車も混ざり、舞台上、むしろ劇場を余すところなく使い街中をところ狭しと動きまわる疾走感溢れるシーンを展開する。
幕間的な目的で作られたシーンではあるのだろうけれど、自転車の曲乗りはかなりアクロバティックなことまでやっていて十分演目として見応えのあるシーンだった。昨今パルクールがケベックですごく流行っていることもあり、それをいち早くダンスとしてサーカスの文脈に持ってくる先進性が素晴らしい。元々パルクールは見せることを前提にした技術でないところを、無理に演目にしたてたところでアクロバットやブレイクダンスに見劣りしやすい中、ローラースケートと自転車という2つの「移動手段」を合わせることで街中を走り抜けるストリートアーティストというコンセプトを共有しヒップホップサーカスを謳うiDらしいシーンを作り出していた。舞台全域で現象が起きているシーンが多かった中、技術的に集中度を上げたいときには自転車など動きの大きいもの動きとブレイクのステップや振り付けの手などの細かな動きを同期させたりして、散漫になりがちな絵の統一感を「移動手段」というコンセプトから一段上のレベルまであげていた。ちなみにこの演目の直前に兄ちゃんが一人コンテっぽい動きから前宙をしていて、それが実に素晴らしかった。タメを一切見せない感じで、振りの流れで手が膝に触れた瞬間に前宙。あれは惚れる。
【コントーション×ブレイクダンス】
大人数が街中を駆けまわり派手な立ち回りを繰り広げてる裏で、街の裏では1組の男女が共に時間を過ごしていた。コントーショニストとブレイクダンサー。ヒップホップとサーカスが混じらなければ共に踊ることはなかったであろう、そんな2人の人間離れした踊り。
後半にもコントーションがあることもあり時間は短めだけれどもかなり刺激された演目。前半はコントーションの特徴的な形に、ブレイクダンサーが似た形で合わせる。コントーションならではの人間離れした姿勢と、ブレイクダンスの技術を使って静止する姿勢が想像以上にマッチしている。コントーションはどうしても「エグい」とか「びっくり人間」みたいな印象が先に立って演目として集中力を維持するのが難しいと思っているのだけど、ブレイクとコントーションの形の共通点を見せていくという導入にすることでコントーションのエグさが緩和されてコントーションを見るのが辛い層にも楽しみやすい感じになっている。前半は片方がポーズを取ったらもう片方が、と交互に動く、といった感じでゆっくりと見やすいペースで進行して現象に慣れてくるころに2人の絡みやユニゾンが多くなってくる。最後はユニゾンだけでなく片方が取った低い姿勢をブリッジで越えてみたり、相手に触れて動かしたりと2人ならではの動きも混ぜてテンポを上げていき、演目としての満足感をあげていた。
【ジャグリング】
たくさんのペンキ職人たちが現れ街並を塗りつぶしいく。プロジェクションマッピングで表現された飛び交う黄色いペンキ。ペンキのしぶきがボールに姿を変えて始まるバウンスジャグリング。
前半の中で特に強くショーアップされていて、なおかつ演目事態のクオリティも非常に高かったことで1部を一気に盛り上げる重要な演目になっていた。公演を通してかなりレベルの高いサーカスアクトが多い中でジャグリングがこれだけの存在感を示してくれたのは本当純粋にとても嬉しい。最初ボール一個で遊んだあと一端バックダンサーであるペンキ職人達が前面に出てきて演者を隠し、どけたら既に3ボールカスケードを初めていたことでジャグリングが陥りやすい「なぜジャグリングするのか」という理不尽なお客さんの問を問わせることなく自然にジャグリングを初めて当然のような空気を作っていたのは見事。壁面にぶつけてやるタイプのパターンをかなり行なっていたが、メインアクトに入る前にアクリル板(ペンキ職人の演出からおそらく建築中のビルのガラスイメージ)をバックダンサーが大量に持って歩いていてそこにボールを転がしたり跳ねさせたりする演出が、バウンス用のアクリル壁面の異物感を見事に取りさらっていた。床アルバートを後ろの壁面にぶつけてやる技すごく好き。寝転がってオーバーヘッドで床と壁バウンスさせるのとかも。アピールや、技の合間なんかにヒップホップっぽいステップが多々混ぜられていたのが印象的。
【エアリアルリング】
空中に吊り下げられたリングに捕まり展開する力強い女性のソロ。
最近結構アメリカのサーカス界、特にクラブイベントなんかで好まれる作風のリング。リングはコントーションと組み合わせる人が多い中、今回コントーションが公演の中でかなり存在感を発揮してることもあり開脚系ぐらいしかなんたい技は入っていない。低音の響く曲でかなり力強く踊る演技で、かなりギリギリのところを筋肉で力強くとどまる感じの技が多い。普通のリングに比べやや男性的で、強い女、というのをすごくよく表現していた。なよなよしたエアリアルが多い中、とても素敵。ただコントーション的技が少なめだったこともあり演技時間に大して少し冗長な側面も。短くまとめて、もっとバキバキに音ハメして欲しかったという欲は若干。ちなみに最初のハンドトゥハンドのフライヤー。
【ジャンプロープ】
出演者総出で大縄。
アクロバットとブレイクダンスはもちろん、トライアルバイク(自転車)やインラインスケートも混ぜることで全員の見せ場となっている。大縄、普通の縄跳び、ダブルダッチなど。そんなに目新しい感じはないのだけれども、今回の公演においてバックダンサー扱いされてしまいかねない4人のダンサーの見せ場が多く、実質的にはダンサーのための演目だったという視点で捉えるべきなのだとおもう。この演目があることで一気に4人のダンサーの存在感というか、ソロやってるアーティストとの対等感が作れていた。
ー30分休憩ー
30分は長いと思う。更に言うと公演の総時間考えるとなくてもいいレベル。ところで、開演時と休憩終わり、照明がものすごくゆっくり暗転していっててそれがとてもよいと思いました。期待感がすごく煽られる上、安全面でも信頼性が高い。演出によるけど、結構真似したいところ。
【倒立】
少し暗めの照明の中、舞台のあちこちに立ち小さな椅子をパスしあう。小さな椅子をいくつか積み重ねてるうちに大きな椅子もまざり、一人の男が中心に置かれた椅子の上で倒立を決めると一気に舞台上の空気が変わる。
二幕しょっぱなから相当の見応えのある演目。椅子1,2個の倒立を少しやった後、雑技式の直立型のイス倒立。1個、2個のシーンは後ろでダンサーが踊っていて、倒立の瞬間や崩れるとき、座るときなどの呼吸や緩急を見事に共有していてよい。バックダンサーも皆椅子に座った状態で、倒立終わりに前拳一回通ってから座る、その座る脱力の瞬間に全員が脱力して下に行った瞬間がすごく好き。2脚をナナメに組み合わせて倒立して、倒立終わりに縦に戻ったところに座るのも好き。地味に倒した椅子をフットキャッチはオシャレだと思う。後半は雑技式の直立式イス倒立。揺らすのはズルいよ笑 ちなみにこの倒立やってたキャストが全編通してすごくスター性のある感じの人で、すごく魅力的だった。
【トライアルバイク】
(客上げ、あまり演出はない)
客上げ、ちょいいじってから寝かせてその人の腕やら脚やら身体やらを自転車で飛び越えまくる。客上げでやってるとはとは思えないぐらいゴリゴリ何回も、色んな飛び方をする。飛び越えるかと思いきやブレーキ、とかそういうのが嫌味なくテンポもかなりよく配置されている。見応え抜群。割と雰囲気変わって集中力を作り直せる演目だったので、公演を2時間公演にしてこの演目を中らへんにいれれば十分だったんじゃ、と思ったり。
【コントーション】
日が沈み虫の声が響く街の外れ、男は一人物思いにふける。男が気配を感じると、そこには見覚えのある女がいた。
ブレイクとコントーションの演目でやってた2人が再登場なのでおそらく再開的な演出だとは思うのだけど、いかんせん女の子が人間に見えないのであまり情緒は感じない(笑) どちらかというとなにか得体のしれない魔法生物にちょっかいを出されている感じに見える。演目自体はコントーション界隈で言えば近年稀に見る良演技。女性の行うものだと一番好きかもしれない。ブレイクと組み合わせた時同様、コントーション技術はふんだんに使いつつも、技としてでなくシーンを作るための要素として使っているため心持ち安らかな気分で見れる。体勢自体はえげつないのだけどやってることはちょっかいを出しては逃げる、といういたって少女的可愛さに溢れる行動。怪獣ツインテールみたいな格好で段差を登るのは大変刺激的な見た目で楽しかった。あと、プロジェクションマッピングで作った渦の中心に入ってくのは言葉にする以上に良い見た目。
【エアリアルストラップ】
雑踏で昼間、自分たちの女に手を出してきた男を、リーダーはついに捕らえる。縛り付けたもののまだ抵抗する男をおとなしくしようとリーダーは殴りかかるも、縛られた男は果敢に歯向かう。男の行動を制限していた紐は、いつのまにかその男の強さを証明する道具となっていく。
一般的なエアリアルの中で、難易度と見栄えのコスパの悪さからおそらく最も見せづらいストラップという演目の範囲で見ると、びっくりするぐらい面白かった。ただ、どうしても他エアリアル、アクロバットなどに比べて演目的に不利な感じは否めず。殴りあうシーンで、動きを大きく見せる道具として使われていたシーンは文句なしで面白い。後半ソロになってからは、そんなに時間自体長くないにも関わらず飽きやすい。ストラップは稀に面白い人もいるんだけど、なかなか難しい演目なんだと思う。腕に巻き付ける登り方の後、回りながら落ちていく技の最後の止まり方は絶対十字懸垂より背面水平のほうがいい。十字懸垂は伝わらない。ちなみにハンドトゥハンドのベース。
【シルホイール】
最初、床に置いたシルホイールの中に女の子が一人座っている。シルホイールの描く円の外から別の女が語りかける。女を囲み閉じ込めていた輪はいつの間にか自由に舞うための道具となる。
とりあえずこの演目を境にグループが和解するようです。ただイマイチコンセプトとか流れはわからない。あれだな、お芝居を詰め込みすぎな割に演目が普通のルーティンってやつ。いさぎが悪い。
輪を床に置き、それをエリアを区切る道具として使って、その内外のコミュニケーションをダンスで見せるのは比較的面白い。ただiDの新規性溢れる演出の中では少し見劣り。でも作りやすくて見栄えのいい、便利な手法。演目自体はいたって普通のシルホイール。シルホイール面白い人はかなり面白いと思うのだけど、この演技は割と単調さが目立っていた。ただ、考えてみると女性ソロのシルホイールというものでそこまで面白いものに出会ってない気もする。
【エアリアルティシュー】
夜の空、雲の上、1組の男女が踊る。布を身体に巻き付け空を舞う女と、雲の間をすり抜ける男のラブストーリー。
スモークを炊き、暗めの青い照明の中エアリアルティシューとインラインスケートの2人による演技。構成の主はティシューだけれど、スケート男の存在感もかなりあり割とデュオな印象が強い。インラインスケートの上下動なくなめらかに進む感じと、エアリアルパフォーマンスが見事に一致していた。スモークによって足元が見えなくなっていた効果も大きい。下で補助を要する類のティシューの技をやる場合の補助者はもはやスケートが絶対的な正解なんじゃないかと思わせるほど。ティシュー自体のルーティンを抜き取ってみると、若干シュート(落ち技)の使い方が構成的な意味で下手な気も。シュート系は足首巻いて逆さになるやつと早い版ヘリコプター(どっちも正式名称分かんないや)の2種類だったのだけど、ひとつめ足首のやつをニードロップとか、逆さ開脚状態で落ちるやつとか自由落下の印象が強い技に変えて、もうひとつ前半に置いたほうがお客さんの全体的な集中力が高まりそう。
【トランポウォール】
ぴょんぴょんすごい。
典型的なウォールトランポリン。半分以上の演者がトランポリン演者として出演。みんな出来るとは。最初高いところに人がいて、その人が落ちる瞬間プロジェクションマッピングで壁も崩れていく絵はハッとさせられる素晴らしい感じ。youtubeでPV見てたときは見づらくなるんじゃないかと懸念していたんだけど全くそんなことありませんでした。というか演者に壁絵が当たってなかった気がして、認識出来たプロジェクターが4台で、なんかその角度からだと不可能な気がするんだけどどうだったんだろう。演者のアクトエリアだけ強い照明ぶつけて消してるってこと?それだけであれだけ綺麗に差を出せるならプロジェクションマッピングを一般的な舞台に導入する難易度はぐっと下がりますね。この演目終わりから、すぐまた曲かかって全員で踊りだすのはとてもラ・ヌーバっぽい。そういう印象になってしまっていいのだろうか。ところで、その時の動きがブガルーで、別にヒットそんな打てない人達もやってたけど割と問題なくよく見えたのが面白かった。形だけでも案外ありなのか。もちろん演目じゃなくてカーテンコールとしてだからこそ許されてる側面も無視できない。
